百山頭歌




これは無法松の下駄のはな緒拾う

ネオンさみしく赤くつめたい街

くつ底に穴が開いてむこうが見える

かんけりもうご飯出来た頃ラジオ

お地蔵さんと立ち小便湯気はひとつ

桜を待つ間に梅がある大阪城

酒をこぼしてチュウチュウねずみ小僧

小便のしずく足にかかってぬくい

ブルースは何の味かねまあ一杯

あんたつらかったろう楽しかったろう

はかま取った土筆の煮てたったこんだけか

俳句より先ず一杯の酒となる

岡室の仲間と飲もうや能

上澄みの酒もこれもみなにごり酒

つるつる長いうどんのおかしさ

歯みがきの味が朝ごはん

カラット天ぷら揚がっているうちに酒

ビールの苦味よ昔の通知表

薄い幸せに酔うビニールハウス

おてんとさんをべんとのごはんにふりかけた

鉄道線路が二本も続く都会

だんだん遠のいてゆく母の手の形

はし持つ手のぬくもりコップ酒

語るはしから心の冷える人と飲む

コップの友は語らず心通う

サンドイッチマンのかけうどん

手ぶくろの先破れ指人形一人

セルロイドの筆入れを太陽にかざす

サーカスのにおいうそのないテント

湯豆腐の汁にしょうゆ一滴またいっぱい

会うて楽しく去って悲しいほうほけきょ

串カツの串二本がはしに化けた

黄色アセチレンバテレンの妖術

雪どけの土になにやらちょっと緑の草

遠のいてゆく風景の銀塩写真朽ち

しっかりにぎった十円玉の汗で駄菓子

トクトク酒の音水もうまい

松ぼっくりがボロリと落ちた

ソースの二度漬け人生にカツ

子を産んでみたい夕焼けトンビ




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